まず、私のイギリスでの不妊治療の流れと内容について簡単にご説明します。
GPで不妊クリニックの紹介状を貰う
プライベートのクリニックで不妊の原因を調査(日本で言う基本検査)
基本検査の結果と紹介状を貰って、プライベートの不妊治療クリニックで治療開始
排卵誘発自己注射(アンタゴニスト法)を使って採卵
ICSI(顕微授精)と着床前検査(PGT-A)をする
ここまでは前回のブログ記事でご紹介しました。(詳しくはこちらをご覧ください)
「ホルモン補充周期法」で冷凍胚移植の準備を始める
胚盤胞移植に、生理の自然のサイクルを利用した「自然周期法」と、薬を使ってタイミングを操作出来る「ホルモン補充周期法」があるという説明を受けて、移植の結果には特に差がないというので私は予定が読める「ホルモン補充周期法」にする事にしました。
「ホルモン補充周期法」だと、もし着床が上手くいって妊娠した場合も11週間は薬を継続しなければならないので、金銭的にも気分的にも負担は増えてしまうのです…。
しかし、イギリスでは自然妊娠の場合でも8-12週目まではお医者さんに診てもらえないので、11週間薬を飲み続けるということは…つまり、その11週間はまだプライベートの病院に困った時にすぐに電話やメールで問い合わせる先がある!そう思うだけでかなり安心かなと思って、それも「ホルモン補充周期法」を選ぶ理由になりました。
「ホルモン補充周期法」で使用する薬
生理が始まって2日目から、子宮内膜を厚くするためのエストロゲンパッチ(7日目から2枚に)と 排卵を抑える筋肉注射(7日のみ)を始めました。
筋肉注射は、採卵の時に使ったものと同じフィレマデル(FYREMADEL)だったので特に問題なし。
エストロゲンパッチはEvorel tradotエストラダーム 100(エストラジオール)というものを使用しました。
パッチの副作用は「肌の痒み」とネットで見たのですが、肌を伸ばして貼ると座った姿勢の時に隙間ができて、その部分がかぶれしまい痒かったです。
かといって、そこまでストレッチせずに貼ると、座ったり立ち上がったりする度にパッチが引っ張られて動きにくいし、3日間は貼りっぱなしなので、結構辛かったです。あと、副作用かどうかは分かりませんが夕方になるとものすごく眠くなりました。
移植前のスキャン
生理が始まって2日目から数えて、10日目にスキャンがありました。
問題はないけれど、まだ子宮内膜の厚みが6mmなので、追加で薬も取って様子を見て4日後(14日目)に、もう一度スキャンをしましょうと言われました。
その日からエストロゲン(飲み薬)で1日2タブレットを摂取するように言われました。
2回目のスキャンを終えて、胚盤移植が生理から22日目に決まりました。スキャンの3日後からは、黄体ホルモン薬と言われる膣剤と、黄体ホルモン注射(プロゲステロン注射/Lubion)も追加で打つことに。
胚盤胞移植(凍結胚移植)当日
凍結融解胚移植、当日。
採卵の時に比べると、メイクをしないだけで殆ど準備もなく、予約の時間もゆっくりだったので通勤ラッシュ時間を避けて病院に行くことが出来ました。
子宮の位置を超音波で見やすくする為に、事前に尿を溜めて膀胱をパンパンにするようにと言われていたのですが、私は超がつくほど頻尿でトイレが近いので、かなり不安で病院の最寄駅に着くまではお水を飲まずに、そこから一気に飲みました。
病院に着いて、手術用の服に着替え、超音波がちゃんと見えるかチェック。胚培養士の方が、名前などをチェックしてスタンバイ。
夫も同行してくれていたのですが、手術室にも希望すれば着いてきて良いと言われたので、一緒に手術室に入りました。
実際の手術時間は、本当にあっという間でした。モニター画面に白い管(カテーテル)がニョロニョロと出てきて、その管の先から何か小さいものがピロっと出てきたと思ったら、白い管が出てきた場所に消えていきました。痛みは全くなし。
普段の超音波検査と変わりありませんでした。帰りに、胚盤胞を戻した瞬間のエコー写真を貰いました。
移植後の過ごし方
胚盤胞移植に関して、日本では移植後はなるべく大人しくお姫様生活をした方が良いと言われているみたいなので、休暇を取って家でのんびりゴロゴロしようかなと思っていました。
担当のお医者さんに聞いてみたところ「以前に、海外の不妊治療クリニックで働いていた時には海外から患者さんが移植手術に飛行機に乗って来ていたけど、みんなその日や翌日には飛行機に乗って帰って行って、成功率は高かったからあんまり関係ないと思うよ」との事。「その日に、仕事に行っても構わないよ」とも言われました。
なので、私は手術当日と翌日は仕事を休みにして、近所の散歩程度の運動はして、3日目からは在宅で仕事を続けました。
移植後の様子(妊娠判定)
手術から10日目に市販の妊娠検査薬(陽性、陰性がデジタル表示のもの)を使って、その結果を報告するように言われました。
*この結果を持ってHFEAに出ている「IVF Birth rate」が決まる様で、実際に赤ちゃんが生まれたかどうかではないらしいという事を知りました。
ネットを見ると、この1回目の結果を待ちきれないでフライングテストをしてしまう人が多いみたいです。私は、フライングの結果でまた心配になりたくなかったのと「着床しない理由は、染色体のエラーが殆ど」と聞いていたので、着床前診断をして一番可能性の高い胚を選んでくれたんだから大丈夫!と思っていたので、そこまで気になりませんでした。(逆に、それでダメならもう仕方ないかと…)
さて、結果は陽性!移植をしてから10日、胚を授精するのに5日掛かって15日目かと思いきや、この時点で4週間と2日目と数えるそうです。
妊娠判定後の超音波検査
妊娠検査薬の結果を伝えて、2週間後にクリニックでの超音波検査の予約を入れてもらいました。その間に、本当に妊娠しているかどうか確信が持てなくて不安になったので、実は1回だけ追加で市販の妊娠検査薬も使いました。
超音波検査の数日前に、生理並みの出血があったので心配になり、病院に伝えました。すると、超音波検査を前倒しで、連絡した翌日に超音波検査を早めてもらえることになりました。結果を知るのは怖かったけれど、週末を挟んでモヤモヤせずに済んだので、すごく助かりました!
そんな訳で臨んだ1回目の超音波検査。妊娠は、問題ないと言われ一安心。まだ心拍確認とかは出来ないのかなと思っていましたが、黒い袋の中で白い点が点滅しているエコーを見せられて「これが心臓だよ」と言われました。
この日は、エコー写真とGPへ持っていくレターを貰って終了。ただ、出血の原因が分からなかったので、念の為に更に2週間後に再度超音波検査をして貰うことに。
2回目のスキャンの前に、つわりの様な症状が始まりました。
朝起きて、めまい、一日中何と無く気持ちが悪い、眠い、疲れる…「つわりは、つわりだと思ったらおしまい」となんだか根性論みたいなもので無視して乗り越えようと思っていましたが、呆気なくやられてしまいました(笑)
そして、幸いにも2度目のスキャンでは特に問題もなく終了。
不妊治療クリニックからの卒業
こうして、2回目のスキャンを終えて不妊治療クリニックからは卒業となりました。
正社員になって、産休手当が出るようになったから本格的に妊活を始めよう!と決めてから約2年、不妊治療を始めようとNHSに紹介状を頼んでから、1年が経ちました。
でも、不妊治療クリニックでの初診から冷凍胞移植までは、僅か4ヶ月の出来事でした。イギリスでは、不妊治療クリニックに診てもらえるまでの道のりの方が長いので、気になる人は少しでも早く始めたほうが良いと思います。
これからは、NHSの病院選びやミッドワイフとのアポイントメントなど、色々やる事が出てきますが、プライベートのスムーズさを味わってしまうとNHSとのやり取りにもどかしさを感じてしまいますが、仕方がないですね…。
11週目まで続ける薬
ちなみに、不妊治療クリニックを卒業しても、こちらの薬は11週まで続きます…。
- プロゲステロン注射(朝晩2回)
- エストロゲンパッチ(3日に1回、2枚づつ)
- エストロゲン飲み薬(毎日1回)
最初は「膣座薬が(朝晩2回)と注射が(朝1回)」だったのですが、先生に「膣座薬がどうしても嫌なんですが、他のもので代用できませんか?」と聞くと「注射を朝晩2回にして代用出来るけれど、注射は高いし1日2回も注射したくないでしょ?」と言われました。
確かに、注射2回は出来れば避けたい…。だけど、本当に膣座薬が嫌で、有難いことに保険も適用されているのでお金はそんなに気にしなくて良いし、意を決して1日注射2回に変更してもらうことにしました。
使うのは簡単だし、痛みもない膣座薬が何故そんなに嫌かと言うと、膣座薬を入れた後に30分くらい出来れば動かない方が良いそうなのですが、例え30分大人しくしていても、夜寝る前に使用しても、薬が漏れてきます。すると、一日に何度も下着を変えたり、おりものシートや温め布を使ったりしないといけなくなり、更にはずっと肌に触れていると不快感や痒みが出てくるのです。私は、その不快感に我慢出来ず、それならせめて痛みの方が耐えられると思って注射を選びました…。(涙)
担当してくれる先生について
私の通っていた不妊治療クリニックでは、受付も男女の人が入れ替わりで(女性の方が人数多め)、スキャンや手術はその日にいる先生とナースが担当してくれる感じで、特に毎回同じ先生とナースという訳ではありませんでした。
採卵→女性
冷凍胚移植→女性
カウンセリング→男性
スキャン→男性、女性どちらも
ですが、比較的こじんまりとした病院だったので3人の先生、ナースも2−3人くらいの中でローテーションという感じでした。カウンセリングの先生は固定だったようですが、結局その先生と顔合わせしたのはスキャンの一回だけで、後は別の先生でした。
私は、男性のお医者さんでも抵抗がないので特に気にしませんでしたが、気になる方は事前に病院に問い合わせた方が良いかもしれません。
不妊治療にかかったお金
続々と保険会社から請求書(保険で支払われているので、報告書)が送られてきています。
全てが手元に揃ったら、また総額をお知らせしたいと思います。ちなみに私の通っていた不妊治療クリニックでは「Unlimited Plan」なる赤ちゃんが出来なければ返金、2年間の間は何度でも治療を続けられるというプランがあるそうです。(料金は、公開されていないのですが、他のクリニックでも似た様なプランは£10,000 to £20,500と書いてありました)
私が気をつけてしていた事
不妊治療だと、薬での治療や手術がメインになってしまって病院(お医者さん)任せになってしまいがちですが、私はその中でも自分で出来ることは全部やり切って、結果がどうなっても後悔しないようにしようと思って食生活の改善をしました。
食品添加物や砂糖、小麦、乳製品は元々あまり食べない様にしていましたが、特に移植前後からは発酵食品、抗酸化作用のある食材をメインにして鮭、卵、イチゴ、枝豆などを率先して食べていました。発酵食品は、イギリスでも比較的手に入りやすい、お味噌、キムチ、冷凍納豆などを。気休めかもしれませんが、腸活に良いかなと思ってヤクルトLIGHT(砂糖の量少なめ)も飲み始めました。
こちらも大いに参考にさせて頂きました!↓
誘惑の多いお菓子類(特にトランス脂肪酸の入っているチョコレートバーなど)やケーキはナッツやフルーツに置き換え。白米はブラウンライスに。パンは自然発酵させた酵母を使ったサワードウのものを選んで、カフェやスーパーで安くて簡単に手に入りやすいクロワッサンやペイストリー(パン・オ・ショコラとか)ドーナツなどは手を出さないようにかなり我慢しました。そして、家での一人飯の時に買いがちだった即席袋麺も封印しました(笑)
葉酸やビタミンを配合した妊娠したい人用のサプリ、オメガ3のサプリは、妊活の時から引き続き。
大好きな紅茶も、カフェインは1日1杯まで。外でお茶をする時は、体の温まりやすいチャイラテ(乳糖不耐症なので、ミルクはオートミルクに)を選ぶ様にしていました。
その代わりに、日本から持って来ていたレンジでチンして目元や首元を温められるものやホットウォーターボトル(湯たんぽ)で鼠蹊部やお腹の周りを温め、パッチをしていて毎日お風呂に入りづらい分、足湯をして血流を良くする様にしていました。冷え性なので、これはつわりが始まるまではほぼ毎日していました。 温灸をしようと、アマゾンで中国製の温灸機と棒灸を購入。しかし、半日窓を開けて空気清浄機を回しても匂いが取れないし、煙たくなってしまったので、夫からクレームが出て、使用は諦めました。
暑い日も冷え過ぎないように、家でもレッグウォーマーはしたり、会社では冷房が効いているので重ね着をして体を冷やさない様に心がけました。
運動面では、特別な事はしていませんが、外出がない日でも毎日30分のウォーキングをするようにしています。
男性不妊と不妊治療中の夫の役割とは
不妊治療は、血液検査、スキャンや自己注射、採卵など女性が主体となって行う事が多いのですが、男性のパートについて少しだけ書かせてください。
男性不妊について
男性がまず行うのは、精液検査。私たちの場合は、夫が1回目にNHSで受けた検査の時、精子の運動量と奇形率が標準値よりだいぶ悪かった様です。
しかし、問題なのはその時点でNHSのお医者さんから「現状タバコを吸っていたり、大酒飲みでそれを止める以外、精子の質は改善はしない」と言われたことです。
私が基本検査をして貰った婦人科の先生からは「特に改善出来ることはないけれど、妊活用のビタミンを男性も摂って、ストレスを溜めないことが大事です」とだけ言われました。
精子は70−75日で入れ替わり、質にも波があるということを知り、夫に伝えてからはサプリの摂取、適度な運動とお酒をほどほどにするのは本人も気を付けてくれていたようです。育毛剤は使っていなかったので、その辺りの心配はありませんでした。
そのおかげか、不妊治療クリニックでの2度目の精液検査では、数値が大分改善されていました。更には、採卵日精液採取の際の検査では、結果は普通で「それでも顕微授精しますか?」と聞かれたほどになっていました!
1回目の検査の時は、夫はちょうど転職を考えていたタイミングでストレスもマックスだった時期なので、それもあるかと思います。なので、1度の旦那さんの精液検査の結果が悪かったとしても諦めないでください。
妊活、不妊治療中の夫の役割
妊活中には生理が終わったかどうかとか、タイミングも女性側から言わないといけない事も多く、不妊治療中には精子をためない方が良いと言ってもこちらで確認しようがない。
あんまり言いすぎると相手のプレッシャーになるし、だからと言ってのんびりしていたら時間だけが過ぎていく…もっと積極的に動いて欲しいという気持ちでイライラしたりと、夫との妊活時の関係性は本当に難しかったです。
採卵の際には、最多3種類の自己注射をしないといけなかったので、一人で落ち着いて出来た方が良いと思い、基本的には注射やスキャンの通院などは自分一人で行っていました。
でも、それが結果的に「私のプロジェクト」の様に感じると言われてしまったので、胚移植の準備の際には、夫もやる事もないし、全く何もしないのも…と思い、自己注射を打ってもらうようにしました。
これで、毎朝注射をしないといけないプレッシャーや、痛みに耐える事を少しでも共有出来たので、やってよかったかなと思います。
いつもは我慢している痛みやしんどさも「痛い、痛い!」とちょっと大袈裟にでも言って、こちらの負担も分かって貰えるようにしたら少し気も楽になりました。(笑)
最後に…
出産までまだ手放しでは喜べない状況ではありますが、まずはここまで来れた事に感謝しかありません。
本当に自然妊娠が奇跡的な事だと改めて知り、その機会を与えてくれた高度生殖医療と基本検査をしてくれたプライベートの病院の先生、不妊治療クリニックの先生や看護師、胚培養士の方々、ありがとうございました!
これからも、NHSでの出産準備に向けて進んでいきますが、ひとまずイギリスで不妊治療をした話はここまでとなります。長くなりましたが、読んでくださり有難うございました。もし、同じお悩みを持っている方がいらっしゃれば、少しでも参考になれば嬉しいです。
無事に赤ちゃんが産まれましたら、ご報告させていただきますね。